昔から日本では「銀行は倒産しない」と言われてきましたが、今では「銀行も倒産する、1000万円までしか安全ではない」時代となりました。2010年9月に日本振興銀行が経営破綻し、日本で初のペイオフが発動されたのです。
アメリカでは、1930年代の金融恐慌を教訓として1933年に預金保険制度ができました。その中心となるのが「ペイオフ」という仕組みで、日本も1971年にこの仕組みを取り入れて「預金保険制度」を作りました。金融機関が破綻した時の処理方法で、金融機関から集めた保険料によって、保険対象となる預金について一定限度まで預金者に払い戻し、そのうえで金融機関を清算する制度をさします。
しかし実際に発動すると銀行連鎖倒産が起きるかもしれず危険であるということで、なかなか発動することはなかったのです。これまでは、金融機関が破綻しても預金額は全額戻ってきていました。これに対しペイオフが導入されると、預金の一部が保護の対象外になる可能性がでてきます。具体的には、預金者一人あたり1000万円とその利息が保護の対象とされるのです。言いかえると、一人あたり元本1000万円を超えた分については、返還は保証されなくなるということになります。
銀行など金融機関は経営破綻すると、資産を売却して預金者への返還にあてます。ただしこの際、資本総額が少ないと預金の一部は返却できなくなってしまいます。この時に預金保険機構を通じて一律に1000万円までの払い戻しは保証しよう、というのがペイオフなのです。
ペイオフの導入は決まっていましたが、金融不安の高まりから、預金の解約を求めて殺到する「取り次ぎ騒ぎ」の恐れがあるということで、実際にはペイオフは2005年まで凍結されていました。2005年4月に全面解禁となり、「元本1000万円までの預金とそれに係る利息」については全額保護されることになりました。
しかし、1000万円を超える分についてはその金融機関の財産状況によることとなるため、全額は保護されません。つまり、その金融機関のすべての預金を合算して、元本1000万円までとその利息だけが保護の対象となるのです。
2010年にの日本振興銀行が破綻した時は、ペイオフの発動により全預金者の3%程度ながらも数千人が適用の対象になりました。みな1千万円の預金が保護されたうえで上限を超える部分の一部はカットされるということですから、これにより生活苦に陥ったり自殺に追い込まれるような深刻な影響はほぼなかったと言われています。
1000万円の預金がない人は無関係というわけではありません。なぜなら銀行が破綻したら清算手続きが行われ、複数の預金や口座の金額を合計する「名寄せ」という作業が終わるまで預金の引き出しが凍結されてしまうのです。ローンの引き落としがある時などは困ります。
また公金を銀行に預け入れている地方自治体、あるいは企業やマンション管理組合などが影響を受ければ、個人の預金の有無にかかわらず無関係ではいられなくなるのです。